小児気管支喘息

喘息は、発作的に気道が狭くなることにより、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)や咳、呼吸困難を繰り返す病気です。
乳幼児では、ウイルス感染などにかかっても、ヒューヒュー、ゼーゼーになるため、風邪と喘息を区別できないことも多いです。このような場合の喘息の診断は、息を吐くときにゼーゼーする喘鳴が、1日以上続いたことが3回以上あることが目安になります。

小児喘息の治療

治療ですが、症状が重くなるにしたがってお薬を追加していきます。
よく使われるお薬としては、ロイコトリエンという炎症物質の働きを抑える抗ロイコトリエン薬、炎症細胞からの炎症物質の放出を抑えるクロモグリク酸ナトリウム、気管支を広げる気管支拡張薬、そして吸入ステロイド薬です。年に数回季節性に咳や軽度の喘鳴が起こるお子さんは、そのときどきで治療をすればよいですが、月に1回以上の発作がある場合などには、継続的な治療が必要になります。また、喘息の発作時には、短時間のみ気管支を広げるお薬(短時間作用型気管支拡張薬)を吸入して気道を広げると症状がやわらぐことが多いです。気管支拡張薬を吸入しても十分な改善が得られない場合には、病院への受診が必要になる場合があります。

小児喘息の経過

小児の喘息は、中学生や高校生になるといったん症状がよくなることが多いですが、気道の炎症は持続しており、成人への持ち越しや、成人になってからの再発症も多く認められます。成人への持ち越しを防ぐためにも、適切に治療管理をする必要があります。

小児喘息のトピックス

  • アレルギー反応にかかわる抗体である抗IgE抗体であるゾレア®が小児喘息に適応となっており、通常の治療によってもコントロール不良な難治症例に使っています。また、インターロイキンと呼ばれるサイトカインを抑える抗体薬も使用できるようになりました。
  • ダニやハウスダストが原因の喘息の場合には、通常アレルギー性鼻炎も合併していますので、アレルゲン免疫療法を行うのもよいでしょう。ただし、アレルゲン免疫療法は喘息がしっかりコントロールされているときに行いますので、是非ご相談ください。

成人気管支喘息

気管支喘息は、気道に炎症が続くことにより、気道狭窄や咳が生じる疾患です。気道の炎症を放置すると、気道の構造が変化し気管が狭くなってしまうため、気管支喘息の発作時以外でも気道の炎症をコントロールする必要があります。将来にわたって、健康人と変わらない日常生活を送れるように指導することが、我々医師の責務と考えています。

気管支喘息の原因は?

気管支喘息には、実はいろいろなタイプがあります。アレルギーが原因の場合もありますし、そうでないものもあります。太りすぎも喘息の危険因子と言われています。また、たばこは喘息治療薬の効果を減弱させ、気道狭窄の進行を早めますので、喘息患者さんは禁煙が必要になります。当院では禁煙指導も行っています。

気管支喘息の診断

治療ですが、症状が重くなるにしたがってお薬を追加していきます。
気管支喘息の診断には、呼吸の機能を検査したりや気道の炎症の状態などを評価することによって行います。また、アレルギーの有無については、血液検査や皮膚テストで行います。喘息の人は、気管支拡張薬という気管支を広げるお薬を使うと、気管が広がるので診断の参考になります。

気管支喘息の治療

治療の基本はステロイド吸入薬になります。飲み薬のステロイドと異なり、全身の副作用が少ないので、安心して使用できます。喘息の重症度によって吸入回数を変えたり、長時間作用する気管支拡張薬を併用します。ロイコトリエン受容体拮抗薬というお薬は、テオフィリン製剤と呼ばれるお薬を併用することもあります。

成人気管支喘息のトピックス

最近のトピックスとして、通常の治療でなかなかコントロールしにくい喘息の人には全部で4種類の注射のお薬が使用できるようになりました。アレルギーの抗体であるIgEを抑制する抗IgE抗体や、炎症物質であるインターロイキンという物質の働きをブロックするお薬があります。いずれも、比較的高額な治療薬ですが、今まで副作用を承知で全身ステロイドを使っていた人には、副作用も少なくすぐれたお薬といえるでしょう。是非ご相談ください。

運動誘発喘息

ランニングなどの運動によって引き起こされる喘息発作を、運動誘発喘息と呼びます。気道内の急激な温度変化や水分喪失などが原因と考えられています。

運動誘発喘息への対策

対策としては、普段から喘息のコントロールを良好に保っておくこと、運動前に十分なウオーミングアップをすること。さらに、運動開始5-20分前に気管支を広げるお薬を吸入すること、などで対処が可能です。
現役のアスリートにも気管支喘息の患者さんは多く認められます。アスリートの場合には、お薬によってはドーピングに引っかかる可能性があるため、かかりつけの医師に相談してください。

慢性咳嗽

咳の分類

咳は誰でも経験したことのある症状です。咳は気道内に貯留した分泌物や異物を外に排出するための防御機構の1つです。ですから、一概に咳を止めればよいわけでもありません。咳は、一般的に発症から3週間未満を急性咳嗽、3週間以上8週間未満を遷延性咳嗽、8週以上続く咳を慢性咳嗽と呼びます(小児では、4週間以上続く咳を慢性咳嗽とします)。急性咳嗽のほとんどは感染症(風邪)による咳です。今話題の新型コロナウイルス感染による咳もはじめはこれに分類されます。風邪による咳の場合には、からだの免疫が風邪のウイルスを退治し、風邪がよくなるにつれて通常は治っていきます。痰が多いときに咳を止めてしまうと、痰が排泄されずかえってからだに負担がかかることになります。風邪がなおっても一部の咳は長引くことがあり、これが遷延性咳嗽になります。また、結核や百日咳なども咳が長引きますので、これらの除外が大切になります。

持続期間による咳嗽の分類

  • 急性咳嗽:3weeks未満
  • 遷延性咳嗽:3weeks以上 8weeks未満
  • 慢性咳嗽:8weeks以上

慢性咳嗽について

慢性咳嗽の原因として最も多いのが喘息系の咳です。喘息は気道が収縮しヒューヒュー、ゼーゼーする病気ですが、咳だけの症状の方もいます。治療として、ステロイド吸入薬や気管支拡張薬などを用います。逆流性食道炎(GERD)も慢性咳嗽の咳の原因として重要です。食道の下部には咳受容体があるので、逆流した胃酸が咳受容体を刺激する場合と、逆流した胃酸が直接喉頭や気管を刺激することが原因の場合があるようです。そのほか、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎も咳の重要な原因となります。副鼻腔炎の場合には、通常痰がからんだ咳になるため、痰を減らすことが咳の治療には重要になります。アレルギー性鼻炎の場合には、喉頭や気管にもアレルギー性炎症が生じることが原因となっている、あるいは鼻粘膜における神経反射が咳を誘発すると考えられます。この場合には、抗ヒスタミン薬などを適切に用いることで咳が軽減されます。もちろん咳の原因は多彩であり、たばこを長年吸っている方で慢性的に咳が治らない場合には慢性閉塞性肺疾患や肺がんなどにも注意が必要になります。

慢性咳嗽の主な原因とその治療

気管支喘息 ステロイド吸入薬、気管支拡張薬、抗ロイコトリエン薬、など
逆流性食道炎 胃酸の分泌を抑制する薬、など
慢性副鼻腔炎 マクロライド系抗生物質、など
アレルギー性鼻炎、喉頭炎 抗ヒスタミン薬、など
慢性閉塞性肺疾患 抗コリン吸入薬、気管支拡張薬、など

当院では、気道の炎症を評価する呼気一酸化窒素測定装置を導入しています。また、肺活量を測定する呼吸機能検査も行っています。咳で困っている方は一度受診をしてみてください。