2か月以上続く「なおりにくい咳」

2023.06.20

 皆さん、長引く咳で悩んでいませんか?

8週間以上もの長きにわたり続く咳のことを「慢性咳嗽」と呼びます。

慢性咳嗽を引き起こす疾患として、咳喘息(咳が主な症状の喘息)、逆流性食道炎、慢性副鼻腔炎や慢性気管支炎、アレルギー性が原因になるアトピー咳嗽・喉頭アレルギー、感染後の咳嗽(新型コロナ感染でも一部の人に咳が長引きます)などが挙げられます。

 治療は、それぞれの原因疾患に対して行います。例えば、咳喘息ならステロイド吸入薬や気管支拡張薬(気管支を広げる薬)、逆流性食道炎なら胃酸分泌を抑制する薬、アレルギーが原因であれば抗ヒスタミン薬、などが使用されます。治療が有効であることが、反対に原因疾患の特定につながることもあります。

 最近、咳に対してさまざまな治療をしても、効果が乏しくなかなか原因が特定できない人も少なくないことから、「治療抵抗性の慢性咳嗽(RCC: Refractory chronic cough)」、「説明のできない慢性咳嗽(UCC: Unexplained chronic cough)」という呼称も使用されるようになりました。また、ほんの少しの刺激、例えば温度差や、会話、歌、においなどに反応して咳がでる人もいることから、「咳過敏症症候群(CHS: Cough hypersensitivity syndrome)」という新しい概念も提唱されています。ちょっと難しくなってしまいましたね。いずれにしても、いろんな治療をしてもなかなかおさまらない咳もあり、お困りの方が少なくないのです。

 昨年、「なおりにくい咳」の新しい治療薬が登場しました。このお薬は、咳に関係する神経の情報を伝達する物質が結合する部位(受容体)を抑える働きがあります。すなわち、過敏になっている咳の神経反射を抑制するお薬です。ただし、しばしば味覚障害を合併することがあるのが難点です。でも、この味覚障害はお薬を中止すれば改善するようです。

 当院は、アレルギー領域と耳鼻咽喉科領域を専門にしていますので上気道・下気道、双方からのアプローチによって適切な診断と治療を目指しています。長引く咳でお困りの方は是非受診してみてください。