新型コロナウイルスに対するワクチンによるアナフィラキシーについて

2021.08.31

医学トピックス 2021年8月28日(英語論文 Banerji A, 他. Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice 2021年より)


新型コロナウイルスワクチンにより、ごく少数ですがアナフィラキシーという強いアレルギー反応を起こす人が報告されています。
これは、ワクチンの中の添加物が原因と考えられています。ファイザー製、モデルナ製のワクチンではポリエチレングリコール2000が原因と考えられていますが、アストラゼネカ製のワクチンにはポリエチレングリコールは含まれておらず、代わりにポリソルベート80という添加物を含有しています。ポリエチレングリコールはデポメドロール®というステロイド注射薬や化粧品、保湿剤、下剤などに、安定化剤として添加されており、一方、ポリソルベートもインフルエンザワクチンや肝炎のワクチン、いくつかの抗がん剤、抗真菌剤など多数の医薬品に添加されています。
この論文では、ワクチンによるアナフィラキシーの危険度を4つの質問項目によって層別化することを奨めています。


質問内容

  1. あなたは、注射(静注、筋注、皮下注)などによって重篤なアレルギー反応を起こしたことがありますか?
  2. あなたは、他のワクチン接種によって重篤なアレルギー反応を起こしたことがありますか?
  3. あなたは、食べもの、ハチ毒、天然ゴムなどによって重篤なアレルギー反応を起こしたことがありますか?
  4. あなたは、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ポリキシロール35が含まれた注射薬やワクチンなどによって4時間以内におこる即時型、あるいは重篤なアレルギー反応を起こしたことがありますか?
  • この4つの質問すべてに「いいえ」と回答した人は低リスクであり、たとえ、喘息やアレルギー性鼻炎、軽症の食物アレルギーなどがあっても、通常ワクチンは摂取しても大丈夫です。ワクチン接種後15分間観察しましょう。
  • この質問の1,2,3のいずれかに「はい」と回答した人は、中等度のリスクがありますが、ワクチン接種は可能です。接種後30分間観察しましょう。
  • 質問項目の4に「はい」と回答した人は、アナフィラキシーを起こすリスクが高いと思われます(院長コメント:実際にはこの質問内容は専門的すぎるので回答するのは難しいでしょう)。さらに症状の詳細を調査し、皮膚テストなどによってアレルギーを確認する必要があります。そして、おそらくワクチン接種は難しいことが多いでしょう。


すでに、1回目のワクチン接種(ファイザー製あるいはモデルナ製)が終わられている方で、1回目にアレルギー反応が出現した場合には、その症状や状態からアレルギーの性状を正確に評価する必要があります。神経反射などのアレルギー以外の反応や、アレルギーであっても皮膚局所の大きな反応だけであれば、2回目の摂取は可能です。また、アレルギー反応があってもアナフィラキシーに至らなかった場合には、2回目の摂取を受けるかについて、医師とよく相談した上で判断しましょう。そして、摂取する場合には投与後30分間は観察しましょう。1回目の摂取後にアナフィラキシーをきたした場合には通常同じワクチンの2回目は打たないでしょう。ですが、必要であれば皮膚テストなどで確認しても良いでしょう。(院長コメント:ファイザー製、モデルナ製でアナフィラキシーを起こしても、アストラゼネカ製は打てる可能性があります)



院長コメント
ワクチンを打つ前に、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応を起こさないか心配な方は多いかと思います。遠慮なくご相談ください。わかる範囲でお答えいたします。(また、ご希望があれば自費診療にはなりますが、皮膚テストも可能です。多少準備期間をいただきますが。。。)