味覚障害について

2022.02.06

 おいしい食事を楽しむこと。これは、日常生活を豊かなものにするためにはなくてはならないものでしょう。今回は、食事と楽しむために重要な「味覚」について取り上げてみようと思います。

味覚には、「酸味」、「塩味」、「甘味」、「苦み」、そして、「うまみ」の5つがあります。このうち、“うまみ”の味覚は、1908年に日本人の池田菊苗によって発見されました。うまみは料理にはなくてはならにものですよね。昆布にはグルタミン酸が、鰹節にはイノシン酸が、そしてシイタケにはグアニル酸が含まれています。いずれも日本料理には必須の食材で、これらを組み合わせることで、うまみが増します(私は料理をあまりしないので、偉そうなことはいえませんが・・・)。

さて、この味覚が障害されたとしたら、本当に人生は味気ないものになってしまうことでしょう。


味覚障害は、さまざまな原因で生じます。新型コロナウイルス感染によっても味覚障害が起こることがあります。因みに、私の知り合いは、コロナウイルスのワクチン接種によって2週間ほど味がわからなくなったと申しておりました。そのほか、薬剤性、心因性、腎機能障害や糖尿病などによるもの、口腔内の真菌であるカンジダによるもの、などがありますが、最も有名なのは亜鉛欠乏による味覚障害ではないでしょうか?先にあげた、「薬剤性の味覚障害」でも、薬剤によるキレート作用によって亜鉛欠乏が生じていることが少なくありません。亜鉛は、味覚受容器である味蕾(みらい)に存在する味細胞のターンオーバーに関連する重要なミネラルです。

治療は原因によっても異なりますが、やはり亜鉛の補充が中心となります。通常血液検査によって血清中の亜鉛濃度が低下しているかを確認しますが、実は血中に存在する亜鉛量は全体の0.1%にすぎないため、必ずしも全身の亜鉛量を反映しているとは言えないので、あくまでも参考値です。亜鉛の多く入った、例えば牡蠣(カキ)などの貝類や肉類などの接種も重要ですが、日本人は、主食であるコメから亜鉛を多くとっているようです。ファンケルから植物性ツイントースが発売されていますが、これはミネラルの吸収を促進すると言われており、亜鉛製剤と同時に接種すると良いそうです。


参考文献: 耳鼻臨床 2022; 補58: 133-7, 口咽科 2017; 30: 31-5