2021.12.18
今回は頭痛を取り上げたいと思います。
大学病院に勤めているときには、他の診療科の先生から、頭痛患者さんがたびたび私のところに紹介されてきました。紹介状には「CT検査にて、副鼻腔炎を認めます。この患者さんの頭痛は副鼻腔炎が原因と考えられますか?」というような内容のことが多かったように記憶しています。実は、ここだけの話、耳鼻咽喉科やアレルギー科を専門にしている医師の中で、頭痛をしっかりと診断できる医師は非常に少ないのではないかと思います。告白しますと、私がそうでした。しかし、「患者さんの頭痛の原因をきちんと診断するためには、自分が頭痛を勉強しなければ」、と思い、脳神経内科の先生にお願いして、毎週一度、頭痛外来を見学させていただくようになりました。そして、どうせ勉強するなら、と思い、頭痛専門医を取得しました(必死で勉強したのに頭痛専門医の試験問題は非常に難しく、焦りました💦)。
頭痛で悩んでいる人は大勢います。そして、その中でも片頭痛は、痛みが強く、発作時には日常の動作でも頭痛が悪化するために、仕事や家事もこなすのが大変です。片頭痛とは通常4時間~3日程度持続する頭痛です。ひどくなると慢性化して、月に15日以上頭痛が起こる人もいます。女性の方では、月経と関連して起こることがあります。そして、頭痛が起こるたびに市販の鎮痛薬を飲んでいる人も多いかとおもいますが、それが長期にわたると「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」になることもあります。そうなると、一層頭痛のコントロールは難しくなります。
最近のトピックスとして、片頭痛の発症に関連していると考えられているCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを抑制する注射用のお薬が保険で認められるようになりました。これは、片頭痛の予防薬で、今まで使用されてきた予防薬で十分な効果が得られなかった人や、そのようなお薬が諸事情により使えなかった人に使用することができます。現在、3種類のお薬が医療保険で使用できるようになっています。通常、月に1回皮下に注射します。臨床試験の結果では、月平均9日前後あった頭痛が平均4-5日に減少していることが報告されています。頭痛により障害されている生活の質も改善することも報告されています。もちろん、全員に有効というわけではなさそうですが、しつこい片頭痛で困っている方は、一度試されてもいいかもしれません。