学会での講演から 新型コロナ感染について

2021.11.21

 第35回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会秋季大会に参加した中で、現在のトピックスである新型コロナウイルスに関する東京慈恵会医科大学感染症科の中澤 靖先生のご講演の内容をごくごく簡単にまとめることにしました。きっと、皆様にもご興味を持っていただけるのではないかと思います。中澤先生、勝手に拝借して大変申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ。

 日本のワクチン接種率は、当初飛ぶ鳥を落とす勢いであったイスラエルなどを追い抜いて、先進国でトップになっているそうです。このワクチンですが、5か月間にわたって入院率を90%抑制することができ、また、新型コロナウイルス感染により問題となっている後遺症の持続期間も短縮するそうです。また、新型コロナウイルスに感染したことがある人でも、ワクチンを接種することにより、再感染のリスクを下げるそうです。一方で、ワクチンを接種したからと言って、新型コロナウイルスに感染しないという保証はなく、いわゆるブレークスルー感染の可能性があります。ワクチンによる感染予防効果は5か月で半分以下になるという報告もあるようです。従って、皆様もご存知のとおり、近いうちに3回目の接種が開始されることになっています。3回目の接種を行うと、中和抗体価が2回目の接種後よりもさらに上昇するようで、その高い効果が期待されているところです。心配される副作用ですが、2回目の接種と同等とのことで、比較的安心して接種ができるのではないでしょうか。

 さて、新型コロナウイルスの感染様式ですが、飛沫感染だけではなく、空気感染もあるようです。飛沫感染では、感染している人から1m以上離れていると、感染のリスクは少なくなりますが、空気感染ではウイルスが空気中に浮遊しているため、同じ部屋にいれば、多少離れていても感染のリスクがあります。空気感染は、5μm以下の小さな粒子によって起こります。ちなみに1μm以下の小さな粒子は空気中に12時間も浮遊するそうです。従って、マスクの着用はもちろんですが、部屋の換気が大切になります。30分に1回は空気を入れ替える、あるいは常に換気をするなどの対策が必要になります。HEPAフィルター付きに空気清浄機も有効とのことです。(当院では、換気に注意していると同時に、HEPAフィルター付きの空気清浄機も常備しております。また、発熱患者さん専用の待合室も用意しております。)

 新しい治療として、抗体カクテル療法がすでに使用されていますが、この薬は重症化リスクのある感染症例の入院や死亡率を低下させ、また、重症化リスクのある濃厚接触者にも使用が可能となっています。新しい内服薬もいくつか開発され、近い将来使用できるようになるようなので、その効果に期待が持たれます。まさに、人類の英知を結集した取り組みが進んでいると言えましょう。

 afterコロナの時代が見えてきているように感じたお話で勉強になりました。