食物アレルギーについてーその3―比較的珍しいアレルギー

2021.10.26

乳幼児の食物アレルギーの代表的食品は鶏卵、牛乳、小麦であることを前々回お伝えしました。そして、前回、アレルゲンの侵入経路(感作経路)が1つではないことをお話しました。今回から3回にわけて、比較的珍しい食物アレルギーについて、話をすすめていきたいと思います。

 今回は、お魚アレルギーです。


 魚をたべて湿疹がでるなどのアレルギーを起こしたことがある方はいますか?その多くはパルブアルブミンというタンパク質が原因です。様々な魚に共通して存在するアレルゲンであり、多くの魚で症状がでます。魚には多くのたんぱく質が存在しますが、その1つと考えてください。実は、パルブアルブミンがアレルギーの原因となっているか調べることができます。アレルギーを引き起こす原因となるタンパクの1つ1つをアレルゲンコンポーネントと呼びますが、このアレルゲンコンポーネントに特異的なIgE(アレルギーの発症に関係する免疫グロブリン)を測定すれば、パルブアルブミンに感作(アレルギー反応を起こしうる状態)されているのかがわかるのです。しかし、これは保険適用にはなっていないので、自費検査となります。そこで、アジ、カレイ、サケなどの特異的IgEを血液検査で調べることになります。これらすべてに陽性となれば、おそらくパルブアルブミンに感作されていることが多いと思われます。通常、このタイプの魚アレルギーは皮膚から感作されることが多く、その証拠に、魚アレルギーの人はアトピー性皮膚炎のことが多いのです。皮膚炎があり、皮膚のバリアー機能が低下しているために、皮膚からアレルゲンに感作されるのです。パルブアルブミンはほとんどの魚に含まれています。だからすべての魚が食べられないかというと、実はパルブアルブミンの含有量が少ない魚もあるのです。例えば、カツオやメバチマグロです。どの程度食べられるかは個人差があると思いますので、食べても症状が出ない量は普段から食べてよいでしょう。普段から食べることにより、免疫寛容(食物アレルギーが発症しにくくなる)が誘導されて、いずれ食べられるようになる可能性もあるのです。ただし、専門医に相談してから初めてください。

 魚アレルギーには他にも原因となる物質があります。その1つが、魚のコラーゲンです。これが原因であることも少なくありません。魚を食べて運動したり、お酒を飲んだりするとアナフィラキシーが誘発される人がいますが、この場合はコラーゲンが原因である可能性が高いと思われます。また、「サバなどの青魚を食べて、アレルギー反応をおこし、それからずっと食べるのを避けている」という人も少なくないでしょう。その場合、もちろん魚アレルギーの可能性もあるのですが、もしかするとヒスタミン様物質によるアレルギー類似反応かもしれません。花粉症の方などは、春先になると抗ヒスタミン薬を内服しますが、ヒスタミンは鼻汁や、蕁麻疹の原因になる物質です。サバ、アジ、イワシなどにはヒスチジンという物質が含まれており、温度管理が悪いとこのヒスチジンがヒスタミンに変化してアレルギー類似反応を誘発します。給食などで、一度に多くのお子さんにアレルギー反応が生じる場合はこのヒスタミン様物質による反応と考えられます。鰹節に含まれていたという話も聞いたことがあります。他には、魚に寄生したアニサキスに対するアレルギーがある人もいます。特に40歳以上の方に多く認められます。アニサキスはサケ、アジ、イカ、マグロ、カツオなど多くの魚に寄生しています。アニサキスの原因アレルゲンにはいくつかの種類があることがしられていますが、その多くは加熱によっても変化しにくいため、缶詰などにも注意が必要です。また、アニサキスアレルギーの場合には、魚を食べてから2時間~12時間経過してから発症することもあります。他の原因として、魚の種類に特異的に由来する原因があり、その魚だけが食べられない場合もありますが、それほど多くはないかと思います。また、魚が食べるの違いなどによってはアレルギー反応が起きることもありますので、油断は禁物ですね。

魚の種類

原因物質

多くの魚

パルブアルブミン

多くの魚

コラーゲン(ゼラチン)

サバ、サケ、イカ、マグロ、カツオ、など

アニサキス

サバ、アジ、イワシ、など

ヒスタミン様物質

タラ

アルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ

マグロ

トランスフェリン