比較的最近知られるようになっためまい疾患3

2021.10.21

今回は「前庭性片頭痛」を取り上げたいと思います。

 前庭性片頭痛は、片頭痛の一症状としてめまいが生ずる疾患です。片頭痛なのか、めまいなのか混乱する病名ですが、簡単にいうと片頭痛の人におこるめまいを「前庭性片頭痛」と呼ぶと考えてください。この疾患を理解するためには、まず片頭痛がどんな頭痛であるかを知っておく必要がありますので簡単に説明します。


片頭痛には、前兆のある片頭痛と、前兆のない片頭痛があります。前兆として有名なのは閃輝暗点(せんきあんてん)です。これは、キラキラした光、点、あるいは線が視野の中に広がってゆっくり移動し、やがて消失する現象です(前兆にはこの他にもいくつかのタイプがありますが、別の機会に説明します)。前兆の有無の割合ですが、前兆のある人が1/3、前兆のない人が2/3くらいになります。この他の片頭痛の特徴ですが、片側性で拍動性の頭痛が多くみられます。ただし、必ずしも片側性ではなく、特に小児では両側性の場合も決して少なくはありません。頭痛の程度は中等度(何とか日常生活を送れる)~重度(日常生活に支障をきたす)であり、ひとたび頭痛が起こると動けずじっとしている、あるいは寝込んでしまう人も多くいます。片頭痛とならんで有名な緊張型頭痛ではここまでひどい頭痛が起こることはほぼありません。頭痛の持続時間は4時間~72時間とされます。また、片頭痛の人は、頭痛が出現する前に光がまぶしく感じたり、音が気になったり、柔軟剤などのニオイが気になったりする人が多くいます。いわゆる、光過敏、音過敏、におい過敏です。

さて、もしあなたが頭痛持ちなら、以下の4つの質問に答えてみてください。

  • 歩行や階段の昇降など日常的な動作によって頭痛がひどくなることや、あるいは動こくよりじっとしている方が楽だったことはどれくらいありましたか?                                     □なかった □まれ □ときどき □半分以上
  • 頭痛に伴って吐き気がしたり胃がムカムカすることがどれくらいありましたか?                 □なかった □まれ □ときどき □半分以上
  • 頭痛に伴ってふだん気にならない程度の光がまぶしく感じることがどれくらいありましたか?           □なかった □まれ □ときどき □半分以上
  • 頭痛に伴ってニオイが嫌だと感じることがどれくらいありましたか?                      □なかった □まれ □ときどき □半分以上

この4項目の質問のうち、「ときどき」、あるいは、「半分以上」のところに2項目以上チェックがついていれば、あなたの頭痛は片頭痛の可能性が高いといえます(監修 頭痛診療推進委員会)。

 さて、本題である前庭性片頭痛について説明しましょう。この疾患は、過去に片頭痛の診断基準を満たした頭痛があって、めまい発作の半分以上に、片頭痛の特徴である症状(①片側性、拍動性の中等度から重度の頭痛、②光がまぶしく感じる、両耳で音が過敏に感じる、③頭痛が始まる前に目がちかちかするような頭痛の前兆がある)を伴います。めまいの程度も中等度(何とか日常生活が送れる)~重度(日常生活に支障がある)で、めまいは5分~3日間続きます。軽いめまい自体は、それ以上続くこともありますが、中等度~重度の比較的重いめまいは通常3日以内におさまっているはずです。 片頭痛がある方で、めまいもするという方はこの疾患の可能性があります。前庭性片頭痛によるめまいを繰り返すようであれば、片頭痛に準じた治療を選択することになります。ちなみに、前庭性片頭痛は、メニエール病とも合併することもあると言われています。