ニコチン中毒 

2026.08.13

夏季休暇をいただいて、のんびり過ごしております。

 受診しようとやってきたのに、休診とは何事! と憤っておられる皆様、申し訳ありません。このお休みを利用して、ウオーキング(広大な芝の上を歩く、すなわちGが頭文字に付く運動)等、健康づくりに励んでおりますが、やや飲酒量が増えており、不健康になっている感も否めません。飲酒している人が100人いると、アルコール中毒になる人は数人だそうですが、喫煙している人が100人いると100人全員がニコチン中毒になっているそうです。ということで、今回はニコチン中毒について取りあげてみます。5月に仙台で開催された学会の講演が元ネタです。演者は、東北大学環境・安全センターの黒澤 一教授(統括産業医)です。その前半部分が興味深かったので簡単にご紹介します。

 喫煙が健康に与える影響は、今更云うまでありませんが、肺がん発症は男性で非喫煙者の4.4倍、女性でも2.8倍だそうです。その他にも、耳鼻咽喉科に関連した、鼻腔・副鼻腔がん、口腔がん、喉頭がん、さらに慢性閉塞性肺疾患など、多岐にわたり健康への影響が危惧されます。イギリスの34,439人の男性医師を対象にした長期間の調査では、70歳時点での非喫煙者の生存率は80%であったのに対し、喫煙者の生存率は50%だったそうです。寿命にすると喫煙者では約10年短くなるとのことです。受動喫煙への健康被害も深刻です。アメリカの酒場やレストランで、喫煙を禁止したところ、受動喫煙者の心筋梗塞の割合が激減したそうです。さらに、最近では三次受動喫煙という概念があり、喫煙者が居住した部屋のソファーや絨毯などによって子供のアトピー性皮膚炎や喘息などの発症リスクも上昇することがわかっているそうです。

 加熱式タバコでも、決して安全ではありません。加熱式タバコは、葉を加熱蒸散させた気体を吸引するものだと思うのですが、ニコチンを肺から吸収させやすいようにする溶媒(プロピレングリコール)が含まれており、いろんな気体成分が肺に吸収されやすくなっているようです。

 さて、このニコチンですが、身体的および心理的依存を生じます。特に心理的依存が禁煙を困難にするそうです。タバコを吸うと脳のα波が9Hzから10Hzに上昇し、脳が覚醒することが快感につながるようですが、非喫煙者のα波は通常でも10Hz前後とのことで、喫煙者は、そもそもの脳の活性が低下しているようです。喫煙することで精神的な安定が得られると思っている喫煙者も多いと思いますし、私も、「少しの喫煙がその人の心の安定につながるなら仕方がないかな」などと考えている部分もありました。しかし、喫煙者の自殺率は、非喫煙者よりもずっと高いのだそうで、喫煙するから必ずしも精神安定化が得られるものでもなさそうです。さらに、黒澤先生は、産業医の立場から、喫煙者は労災事故を起こす可能性が高いことにも言及されていました。そして、駅などで、喫煙室などが散見されますが、分煙ではなく、完全禁煙が必要であることを強調されていました。星野リゾートでは、そもそも喫煙者は雇用しないことになっているそうです。

 少し長くなりましたが、地域の人々の健康を守る立場から、皆様の禁煙をしっかりサポートする必要があることを再認識しました。

 禁煙ご希望の方、遠慮せず当院外来受診してください。「その前にお前が禁酒しろ!」というお声が聞こえますが、大丈夫、まだアル中ではありませんので。。。??