2025.11.24
今回は日本頭痛学会の翌日に参加した、日本耳鼻咽喉科学会秋季大会について1つ紹介します。
みなさんは、抗菌薬・抗生物質に抵抗力をもつ微生物(細菌・真菌etc)すなわち薬剤耐性菌が増加していることはご存知ですか? 今回の報告は金沢大学の感染症対策の専門家である金森先生の講演をもとにまとめました。
統計によると、2019年に薬剤耐性菌による死亡者は世界で127万人とのことです。その数は、エイズ、マラリア、結核を抜いています。このままいくと、2050年には3900万人以上が亡くなる計算だそうです。特に高齢者で問題となっており、薬剤耐性菌が問題となる事象は、1億6900万人程度になるとのことです。
この、原因の一つが、安易な抗菌薬・抗生物質の投与です。この原因には患者さん側の要因と、医療者側の要因があると思います。風邪をひいたときに、医療者は早く治してあげたい、重症化を防ぎたいという気持ちが働きます。風邪の多くはウイルス感染ですから、抗菌薬・抗生物質は効果がありません。ですが、万が一、細菌感染だったら、症状が長引いて重症化してしまう可能性が頭をよぎるのです。すると、ついつい抗生物質を処方してしまうのです。一方で、皆さんは風邪をひいたときに、医師に「抗生物質を処方して欲しい」とリクエストしたことはありませんか?よくあるのは、「先生、今週末大事な会議があるのです(家族と旅行にでかけるます、という場合もあるでしょう)。何とか早くなおしてもらえませんか?抗生物質を処方しておいてください」。医師はついつい、「そうですね。それでは念のため、抗生物質を処方しましょう」。結構ありがちですし、もしかすると、私もしているかもしれません。しかし、ウイルス感染にいくら抗菌薬を処方しても無効です。抗菌薬はあくまで、細菌に対するお薬なのです。医師の役割は、ウイルス感染か細菌感染かを見分けることにあります。細菌感染を見逃すと、それはそれで、重症化することがあるのです。例えば、のどが痛いと言って受診する人はたくさんいます。ほとんどがウイルス感染による風邪なので、抗菌薬は不要ですが、一部は細菌感染が重症化して扁桃腺の裏側に膿がたまる”扁桃周囲膿瘍“になります。この状態には、抗菌薬が必要で、見逃すと頸部にも膿がさがり、さらにそれが悪化すると縦郭に広がり致死的になることがあります。稀ですが、急性副鼻腔炎や中耳炎から、脳に膿がとび脳膿瘍になることもあります(結構怖いのです)。
薬剤耐性菌ですが、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が有名です。最近では、MRSAに加え、カルバペネム耐性のアシネトバクターや腸内細菌、第3世代セファロフポリン耐性の細菌、リファンピシン耐性の結核なども問題となっています。キノロン耐性の大腸菌なども増えています。これら細菌の蔓延を防ぐため、抗菌薬の乱用は慎まなければなりません。
さて、本年になりカンジダ アウリスという真菌がクローズアップされています。まだ、お目にかかったことはありませんが、この真菌が暴れ出すと、通常の抗真菌薬の効果が不十分で、致死率が3-6割になるそうです。
細菌のみならず、エボラ熱、新型コロナウイルス感染症など、次から次へと現れる感染性微生物と人類との闘いはこれからも続きます。