2025.11.13
第74回日本アレルギー学会参加報告第4弾です。
今回は花粉-食物アレルギー症候群(PFAS: pollen-food allergy syndromeと呼びます)についての教育講演についてまとめてみます。 今回の原稿は、国立三重病院の長尾みずほ先生、昭和医科大学の猪俣直子先生の講演をもとに作成しました。どちらもアレルギー界隈ではご高名な先生です。長尾先生には以前、自分の講演の際に、PFASのスライドを頂戴したことがあります。感謝、感謝。また、猪俣先生には、猪俣先生が横浜市立大に在籍中に、皮膚科の研修をお願いしたことがありました。残念ながら、自分の都合があわず実現しませんでしたが…どちらも素敵な方です。こうしてみると、アレルギーの世界では、女性が活躍していますね!
さて、最も多い、PFASとして、シラカバやハンノキ花粉に感作されたアレルギー性鼻炎の人が、桃やリンゴを食べると、口の中がかゆくなる、あるいは腫れるアレルギーが有名です。シラカバ、ハンノキアレルギーに感作すると、そのアレルギーの原因物質とよく似たタンパクである、桃やリンゴのアレルギー物質にも感作されて、摂取するとアレルギーを症状がでるのです。シラカバアレルギーの方は、北海道に多くいらっしゃいますが、長野県もシラカバ花粉は多く飛散しますので、桃、リンゴアレルギーの方は相当数いらっしゃいます。この場合、通常、症状は口の中の腫れなど、局所に限られます。また、桃やリンゴを加熱すると、原因のタンパクが構造を変化するため食べてもアレルギー反応が生じないことが多いです。このシラカバ花粉症の方は、大豆製品によるアレルギーもきたすことがありますが、大豆のアレルゲンコンポーネントであるGly m 4(保険収載されており、検査可能です)は、比較的熱に強く、加熱されている豆腐でも症状が出ることがあります。また、摂取による全身症状が出ることもあり注意が必要です。シラカバと同じ、ブナ目のハンノキは関西や関東でも飛散するため、結局は全国どこにでもこのアレルギーを持っている方が一定数いらっしゃいます。。
最近注目されているのは、ジベレリン関連ペプチド(GRP)という物質です、この物質は熱や消化酵素に強いため、全身のアレルギー症状が発現します。スギ・ヒノキ花粉症と関連していると考えられています。GRP類は桃、ウメ、リンゴ、サクランボ、イチゴ、オレンジ、トマト、ザクロ、ブドウなどに存在します。上段に述べた同じ桃のアレルギーではPru p 1といいうアレルゲンコンポーネントにより引き起こされますが、こちらはPru p 7というアレルゲンコンポーネントが原因となっており、一般的に重度のアレルギー症状が出現します(モモやリンゴを食べたあとに、運動する、あるいは鎮痛薬を服用しているときにモモやリンゴを食べると、症状を引き起こし、まぶたが腫れる、あるいは、喉が腫れて息が苦しくなる、あるいは全身アナフィラキシーを来たすこともあります)。桃自体の特異的IgE検査では4割は陰性に出るそうです。ほとんどのアレルゲンコンポーネントの測定は保険収載されてないため、代わりに皮膚テストが有用ですが、桃や、リンゴは季節物ですので一年中用意することが難しく、梅干しの皮膚テストで代用されます。スギ花粉症患者さんの2割程度がGRP類に感作されているようですが、実際に症状がでる人は少ないようです。また、リンゴGRP(Mal d 7)の感作頻度も高いとのことですが、臨床症状と一致せず、症状がでるかでないかは果物による違いがあるようです。
いずれにしても、みなさん、ご注意ください!