2025.11.13
第74回日本アレルギー学会に参加して学んだこと・要点を何回かに分けて報告いたします。まず、1回目の報告です。。
・食物アレルギー
食物アレルギーについての講演はいくつか拝聴しました。今回のコラムシリーズでも数回に分けてふれます。
まず、国立相模原病院の佐藤さくら先生。
彼女は埼玉県にI市の生まれで、私が埼玉医科大学にいた時期に数回市民公開講座の講師として、お話していただきました。物腰が柔らかく素敵な女性です。
さて、それはさておいて、小児の食物アレルギーでは、ナッツ類の占める割合が高くなっていることが指摘されています。特にクルミとカシューナッツの割合が高く、特にクルミは食物アレルギーの原因食品の第2位になっているとのこと。かつての小麦、卵、乳製品に割って入ってきているのです。ナッツ類はアレルギーが寛解すること(体制獲得)が少なく、また、重症化することも多いので気を付けなければいけません(もちろんお子さんによりますが…)。以前は、食物アレルギーの治療として、毎日少しずつ食べて、徐々に食べる量を増やし、ある程度の量が食べられるようにする方法が試験的に行われていましたが、アナフィラキシーの事故もそれなりに発生していました(死亡例も報告されています)。少しずつたべて、耐性(すなわち体を慣れさせる)を獲得していく治療を経口免疫療法と呼びますが、最近では、方法と目的が変わっています。例えばクルミでは0.5g以下程度の少量から接種を開始し、週に2-3回食べるようにして、最終的には3g程度食べられることを目標に治療しているとのことです。この方法により、誤ってクルミを接種したときでも、激しいアレルギー反応:アナフィラキシーの発症が抑制できるとのことです。比較的、安全に施行できるため、今後このように少量摂取を継続する治療が主流になりそうです。ちなみに、小麦アレルギーの場合だとうどん2g接種を目標に、少量を継続接種することでアナフィラキシーの発生率が減少するとのことです。
小児の食物アレルギー自体は、6歳までに7-8割が自然に耐性獲得―すなわち食べられるようになります。たとえ、学童期まで遷延しても、半数は12歳までに耐性獲得に至ります。ですから、すべてのお子さんに経口免疫療法が必要なわけではありません。相模原病院の永倉先生は、少量を実際に食べてもらう負荷試験で反応がでなかったお子さんには食事指導で様子をみる。そして、アレルギー反応が出た場合には少量ずつ食べる経口免疫療法を施行するとのことです。牛乳であれば3ml以下の少量から開始し、3mlに到達したらしばらく維持し、その後少しあけて25mlを目標に維持し2年間継続することで、ある程度目標が達成されるとのことです。あくまでも、誤食による重症化の予防が目標です。ある程度食べられると、外食や旅行も比較的安全に行けますし、お菓子や加工品も接種可能になります。