学会報告:昼の部 持続性知覚性姿勢誘発めまい

2024.05.22

第125回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会に参加して学んできたことをご紹介します。

今回は、「持続性知覚性姿勢誘発めまい」について、ご紹介します。

この長い名前の疾患はPPPDと省略されます。以前、当院のコラムでも取り上げたことがあります。今回の学会では、新潟大学の堀井教授(この先生も、学会報告夜の部で取り上げた、ひらひらの会のメンバーです)が、宿題報告として、発表されていました。宿題報告とは、医局をあげて、総動員で研究し、その研究成果を発表する場です。毎年2つの宿題報告が学会で発表されます。

前置きはこのくらいにして、さて、このPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)ですが、3か月以上つづく慢性めまい疾患1つです。めまいの強さは、増悪(重くなる)や軽減(軽くなる)を繰り返しますが、夕方になるにつれて、悪化することが多いようです。立ちあがる、歩行、あるいは、動いているものや、スーパーの陳列棚を見たりすると悪化します。多くの場合は、先行するめまい疾患(メニエール病や良性発作性頭位めまい症など)があり、その疾患自体は改善した後にめまいが持続するときに疑われます。今回の講演では、その病態仮説(どうしてそのような現象が起こっているのか)が紹介されていました。私が理解できた範囲で簡単に説明してみます。少し、難しいのですが。。。

身体のバランスは視覚(目の情報)、体性感覚(足の裏で感じた身体のバランス)、前庭覚(耳が調整している平衡機能)の3つの情報を脳が統合して保たれています(下図:左上参照)。メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎などの急性めまいの多くは前庭機能の低下が原因で引き起こされます(右上図)。脳内では前庭機能の低下を補うため、視覚と体性感覚の機能的増強がおこり、一旦めまいはおさまります(左下図)。時間経過とともに、次第に前庭機能は回復し、正常化するのですが、前庭機能が正常化した後も、視覚・体性感覚機能が大きく維持されることで、慢性のめまいが生じる(右下図)。これがPPPDの病態仮説とのことでした。

 堀井教授をはじめ、新潟大学の医局員の先生方の努力には頭が下がります。

 当院にも、PPPDの患者さんは多く来院します。薬物療法の有効率は6割程度とされていますが、前庭リハビリテーションを組み合わせることも有用です。新たな治療法も開発中のようですので、今後の動向を見て参りたいと思います