学会報告:昼の部 ヒトパピローマウイルスワクチンについて

2024.05.19

第125回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会に参加して学んできたことをご紹介します。

今回はヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて取り上げます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんを引き起こすウイルスとして有名です。子宮頸がんは2018年の統計では34,781人の人が罹患しているそうです。性的接触による感染者のうち、10%が(がん)化するとのことで、一度の性交渉の経験があれば罹患(りかん)(ウイルスに感染)するリスクがあります。すなわち女性であれば誰でも子宮頸がんを発症する可能性があるのです。日本では、感染を予防するためのワクチン接種の比率が他の先進国と比べて極めて低いことが問題となっています。この原因になっているのが、ワクチン接種による副反応に対する懸念なのですが、これがメディアで繰り返し報道されたことがその大きな要因となっています。副反応としては、言語障害や不規則な歩行、倦怠感の持続など、いくつか報告されているようですが、実際には、ワクチンの成分そのものによる副作用の可能性は極めて低いとのことで、ワクチン接種による心因性ストレス反応のことが多いとされているようです。公費でのワクチン接種は、小学校6年生から高校1年生の間に3回接種することになっているようですが、その年齢を過ぎてからでも、子宮頸がんの予防効果はあるようです。現在は女性のみの接種ということになっていますが、アメリカやオーストラリアでは男性への接種も進んできています。なぜ、HPVワクチンが耳鼻咽喉科頭頸部外科で話題になるかというと、このウイルスは、”中咽頭がん”という“のどのがん”の原因にもなっているからです。中咽頭がん患者におけるHPV陽性率は50-60%と言われています。男性にもHPVワクチンを接種することで、女性への感染リスクが減少すると同時に、男性の中咽頭がんのリスクも低減することが期待されるため、今後は男性への公費による接種も検討されるべきだということです。私も講演を聞いて、是非そのような世の中になって欲しいと、強く感じました。

演者のひとりである産婦人科の先生は、「是非、耳鼻科の先生もHPVワクチンを積極的に女性の方に打ってください」とおっしゃっていました。来年からは当院でもHPVワクチン投与を検討したいと考えています。ニーズがあるかはわかりませんが。。。